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「ハツカネズミと人間」 [Play]

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 この数日間に舞台と映画で、ジョン・スタインベック(「怒りの葡萄」、「エデンの東」の作者)原作の「二十日鼠(ハツカネズミ)と人間」を観た。
 タイトルだけは以前から知っていたが内容はまったく知らず、お芝居を観に行ったのは、ギタリストの堀尾和孝さんとJUNさんが出演するからだった。映画は、そのお芝居を観て感動して1992年に映画化された作品をDVDを借りて観た。
 
「1930年代、 大恐慌時代のカリフォルニア州。いつか自分達の農場を持つという夢をもつ出稼ぎ労働者、ジョージとレニーはいつもともに行動している。しかし、精神遅滞(発達障害)のレニーがいつも問題を起こすため、数々の農場を渡り歩くはめになる。そんな二人がたどり着いた新たな働き口で、二人は働き者で賢いスリム、ボスの息子のカーリー、名も無きカーリーの妻、下品で無神経なカールソン、多額の貯金を持つ片手が無く孤独な老人キャンディ、黒人であるが為に賢くとも馬小屋に住まわされているクルックス等に出会い、生活をともにしてゆく。
 ジョージはいつもレニーに彼の夢を語っていた。そしてある日、キャンディの、右手を失った際の資産によって、ジョージとレニーの夢が現実味を増す。しかし夢の実現を前に、2人に悲劇が訪れる…。この時代の貧しい労働者たちの境遇とレニーの無邪気さが物語の中心に据えられている。」(物語のあらすじ・・・Wikipediaより引用)

 お芝居と映画、原作を一にしているのだからストーリーは当然ほぼ一緒。ただ、舞台の第2幕のパーティーの場面は、舞台用に加えたのだと思われる。酒場のような場所で酒を飲んで盛り上がる若者たち、男女間での卑猥な会話や、喧嘩なども生まれる群像シーン。堀尾さんとJUNさんの出番はこのシーンだけなのだが、堀尾さんはにこにこしながらギターを弾きまくるジェームスというモテ男、JUNさんはジェームスに寄り添うケイトを演じている。ライブでもよく弾く曲などをバックミュージックのように生音で弾き、シーンの最後では役者さんが堀尾さんの伴奏で「Amazing Grace」を唄いあげる。堀尾さんもJUNさんもセリフは一言ずつしかなかったが、2人の存在感はこの芝居を観に来た人に印象に残ったと思われる。またこの芝居全編にわたって堀尾さんの奏でるアコースティックギターの曲が効果的に使われていた。

 お芝居は、限られた狭い空間で大きな装置も使わず、セリフのやりとりで情景を伝え心理描写も行うという点では、映画に比べて演ずる俳優の演技力に左右されるところが大きいと思うが、ジョージ(今野哲治)とレニー(畠垣洋司)を演じた2人共素晴らしく、映画で主役をはったゲイリー・シニーズ(ジョニー役)、ジョン・マルコヴィッチ(レニー役)と比べても遜色ないくらいはまり役だった。最後の悲劇的結末も、この2人の熱演あればこそ際立っていたのだと思う。また、同じ農場で働く労働者たちも一人ひとりが個性的に描かれており、年老いたキャンディや、黒人のクルックスなどは、映画での描かれ方より一層の存在感を示していたし、彼らの放つセリフの一言一言に重みがあった。(キャンディを演じていたのは、脚本・演出も担当した石山雄大さん、調べてみたらすごいキャリアを積んだ方だったんですね)

 お芝居のほうは、新宿SPACE107で8月3日から8月7日まで全7公演を終了。きっと堀尾さんとJUNさんは他の役者さんたちと打ち上げで美味しいお酒をたくさん飲んだことでしょう。ジェームスの取り合いになっていなければいいのですが・・・


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コメント 7

コメントの受付は締め切りました
ジェームスです。

残念ながら、モテ男は舞台と共に終了したジェームスです(笑)
私も映画が見たいと思いつつ、本番に臨んでしまいました。
WANさんのこの日記で、ジョージとレニーの素晴らしさを、
再確認し、嬉しく、また彼等に会いたくなりました。
それ位、彼等は良き演技、良き人柄でした。打ち上げでも!
モチロン雄大さんの存在感は抜群でしたし、ベテラン陣は、
スリム役の佐藤仁哉さんをはじめ、皆さん最高の演技でした。
そんな中での私は、何をしていいやら、、、
でも精一杯、楽しく最後まで頑張れたのは、二場出演の、
皆さんのおかげでした。心よりの感謝です。
お越し頂き有難うございました。これから旅支度です。
by ジェームスです。 (2011-08-08 06:09) 

やぎたこ 辻井貴子

そんな公演があったとは!! せめて映画だけでも、観ようと思います。やぎたこの唄う歌の背景とも、とても重なっているスタインベックの世界、まだまだ知りたいことばっかりです。
by やぎたこ 辻井貴子 (2011-08-08 10:05) 

WAN

>ジェームスことホリオさん

公演お疲れさまでした。
すばらしい作品をご紹介いただきありがとうございました。ホリオさんとJUNさんが出演していなければ知らないで通りすぎていた作品ですから。
ホリオさん、ライブとは違う緊張感を連日味わっておられたのでしょうが、客席から見るかぎりではホリオさんがいちばん自然体だったように思えましたよ。
休む間もなく中国・四国へのライブ行脚お疲れさまです。私もこれから東北行きの旅支度です。

>たかこさん

映画だけでもぜひご覧になってください。「怒りの葡萄」は以前観たことがあったのですが、この作品は全くの予備知識ゼロでした。
いずれも、ウディ・ガスリーが放浪の旅をしていた時代と重なりますね。
by WAN (2011-08-08 14:30) 

辻井貴子

早速、読み、観てみました。とても面白かった!!です。
教えて頂けて本当によかった!ありがとうございます。
またいろいろ、参考にさせて頂きますね。
なかなか都合が合いませんが、原宿にも、いつか、必ず・・・!!
またお会いしましょう~
by 辻井貴子 (2011-08-15 23:07) 

WAN

>たかこさん

本も読まれたのですね、凄い!
今度お会いしたときにその辺のお話もできると嬉しいです。
ナターシャ・ナイトにもぜひ!お待ちしております。
by WAN (2011-08-16 22:45) 

ETCマンツーマン英会話

Robert Burnsのファンです。「二十日鼠と人間」は、Burnsのの「To a Mouse」という詩から引用されているのですね。時代の流れと言うか、スコットランドと米国労働者との繋がりを感じ、とても興味深いです。小説是品読んでみたいと思いました。
by ETCマンツーマン英会話 (2011-12-06 16:01) 

ETCマンツーマン英会話

「二十日鼠と人間」をDVDで観ました。小説も翻訳本と原作も読みました。作品の奥深さに感動しています。この作品のお陰で、ロバートバーンズの「To A Mouse」の詩の世界観をあらためて感じることができています。よい作品というのは、こんなふうに余韻がたのしめるものなのですね。
by ETCマンツーマン英会話 (2012-05-06 23:11) 

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