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「告白」 [CINEMA]

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 映画の冒頭約30分、教師・森口悠子役の松たか子の告白が延々と続く。終業式の日。
「私は今月いっぱいで教員を退職します。」「わたしが辞職を決意したのは愛美の死が原因です。しかし、もしも愛美の死が本当に事故であれば、悲しみを紛らわすためにも、そして、自分の犯した罪を悔い改めるためにも、教員を続けていたと思います。ではなぜ辞職するのか?」「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。」
 
 湊かなえ原作の小説は、2009年本屋大賞第1位を獲得し、文庫本もベストセラーになっている。この作品を「下妻物語」「嫌われ松子の一生」で監督としての地位を不動のものにした中島哲也が、自ら脚本を書き独特のタッチで映像化、一級品のエンターテインメント・ミステリーに仕上げた。
 確かに小説同様面白い。関係者が代わる代わる「告白」していく小説の構成を、ほぼ忠実に映画の中にも再現し、まさにページをめくる手が止められない、といった面白さである。この物語の全体を覆う重苦しさや不気味な感じが、文字だけの世界に、凝った映像と効果的な音楽が加えられることによって一層助長されている。この話は犯人探しでもなく謎解きでもない。娘を殺された女教師の復讐劇であり、その復讐劇は負の連鎖を生み出していく。
 
 この物語には僕にとって心を寄せたいと思える人物が登場してこない。他人への思いやり、人を信頼する心、このような感情に浸れない物語を観終わったとき、一気に読んだものの後味があまりよくなかった小説の読後感と同じような感覚を味わった。

2010年6月14日
TOHOシネマズららぽーと横浜


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コメント 7

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末弟子

テレビのCMを見ていて
精神的に怖い作品が苦手な末弟子は
「観れない」と思いましたです。
by 末弟子 (2010-06-16 04:56) 

茜丸

私も小説「告白」を読んで、嫌な思いをした一人です。
人類は裁判を発明することによって、
私的制裁による負の連鎖を克服してきたはずなのに、
ここんところ「被害者の感情」が強調される傾向のなか、
リンチをも許容するかのような風潮が見られます。
好きな作家の一人である伊坂幸太郎すら
「重力ピエロ」で私的制裁を認めてしまい
苦々しく思ったものです。
by 茜丸 (2010-06-16 07:55) 

WAN

>末弟子さん

あの小説がどのように映画になるのかという興味と、大ヒットしているという宣伝につられて観に行きました。どんべえもこの手の話は苦手なので敬遠しています。

>茜丸さん

映画としては監督の力量が発揮されて面白いのですが。
やはり観終わったあと元気になれる映画がいいですね。
横浜では昨日、授業中に生徒が隣の生徒を刺すという事件が起こってしまいました。関係ないかもしれませんが、映画を観たあとだけについ関連づけてしまいます。
by WAN (2010-06-16 11:22) 

トラ次郎

作家が地元に住んでいると聞いて、私も数週間前に読みました。
読んだ後、何とも重苦しい気分になりますよね。
母と子の関係は本当に様々ですね。
中島哲也監督は、あの暗い小説「嫌われ松子の一生」を、私が思ってもいない形で仕上げていたこともあって、映画「告白」は観てみたいと思っています。
by トラ次郎 (2010-06-19 11:02) 

WAN

>トラ次郎さん

お久しぶりです。
映画大ヒット中ですね。
ご覧になったらぜひ感想を聞かせてください。
by WAN (2010-06-19 14:25) 

おっちゃん

お久しぶりです。

私も「告白」読みましたよ。下の娘が読んでいたので、そのあとに私も読みました。
久々に小説を読んだので、面白く一気に読みきりました。
娘が映画は観られないので、DVDになるのを待とうかと思っています。

この映画/原作も飲むと盛り上がりそうな題材ですね!
また、ビールでも飲みながら、しましょうね!!

by おっちゃん (2010-06-25 12:59) 

WAN

>おっちゃん

お久しぶり!
ななちゃん読んだんですね。ぜひ感想を聞いてみたいです。
映画は、ななちゃんにはどうかなぁ・・・・
by WAN (2010-06-30 12:11) 

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