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「風が強く吹いている」 [CINEMA]

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三浦しをん原作「純度100%の疾走青春小説」(文庫本の帯より)の映画版。先日この小説を読んで映画も観たくなった。
竹青荘というおんぼろ寮の住人で箱根駅伝出場を目指す、という無謀とも思える企ては、絵空事のように思えるが、ヒザに故障を抱えるランナーであり寮の管理人役も兼ねる清瀬灰二(ハイジ)の夢は、走るために生まれてきたような天才的ランナー蔵原走(カケル)に出会い、寮に引きずり込むことから、現実味を帯び、1年弱ににわたる挑戦がはじまる。
文庫本で670ページにわたる小説を、カットしたり脚色したりして2時間あまりの映画にまとめてある。10人の個性的ランナーの内面を詳細に描くことはできないが、それでも一人ひとりが描き分けられていてわかりやすく作られている。箱根駅伝に出場するという目標、そして箱根路を10人で襷(たすき)をつなぐという目標に立ち向かっていく若者たちを無条件で応援したくなる。実際の競走場面も臨場感あふれて本物のレースを見ているような感じ。アンカーであるハイジがゴールにたどりつくシーンは映画ではドラマチックすぎるように思えたが。
派手な宣伝もなくどちらかといえば地味な部類の映画であるが、後味のさわやかな佳作。映画も小説もどちらもお薦めです。

2009年11月28日 
TOHOシネマズららぽーと横浜

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『ヤング@ハート』 [CINEMA]

young1.jpgともやさんの年忘れコンサートの前に、マイミクまさみさんからお誘いをいただき、「シネカノン有楽町2丁目」で観ました。この映画のことはまったく頭になかったのでドキュメンタリーということすら知りませんでした。
この映画は、平均年齢80歳の年金生活者からなるアメリカ・マサチューセッツ州のロックンロールコーラス隊、『ヤング@ハート』の故郷での公演までの6週間を、メンバーのインタビューなどを交えながら追っていく、ミュージカルのようなドキュメンタリーです。
このコーラス隊を率いているのは54歳のボブ・シルマンという指揮者。1982年のコーラス隊創立以来ずっと指導しているということが賞賛に値するなあと思わずにいられません。彼の厳しい指導こそが、このコーラス隊をこれほどまでに観客を熱狂させる原動力だと思います。選曲もお年寄りだからという妥協はありません。初めて聴かされる団員が思わず耳をふさぐような曲を新曲として用意し、6週間後の公演のためのレッスンを開始、はじめはとても出来そうもないと思われたのに、みるみる形になっていく。しかしこの間にも、中心メンバーの死という事態がおこる。・・・そんな悲しみや困難を乗り越えて彼らは見事にコンサートを成功させます。

劇中で歌われる歌のいくつかです。
「Should I Stay or Should I Go」ザ・クラッシュ
「I Feel Good」ジェームス・ブラウン
「Nothing Compares 2U」プリンス
「Forever Young」ボブ・デイラン
「Fix You」コールドプレイ

この中でも、刑務所の慰問のときに歌われたボブ・ディランの「Forever Young」は、直前に仲間の死を知ったメンバー達の彼の死を悼む気持ちが込められて感動的です。刑務所の受刑者の「生涯でもっとも感動したコンサートだった」という言葉が印象に残ります。
「Fix You」も心に響きました。フレッド・ニトルは、心不全での死の危機を乗り越えて、このコンサートで一夜の復活をとげます。一緒にデュエットするはずだった相棒を直前に亡くしながらも朗々と歌い上げ、満員の観衆はスタンディングオベーションでそれに応えます。映画館ということも忘れ思わず拍手をしたくなりました。

この映画を観たあと、同じ有楽町よみうりホールで行われた「高石ともや年忘れコンサート」へ。67歳で歌い続けるともやさんがまだまだ若いと思えた日でした。


「ひゃくはち」 [CINEMA]

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早見和真の原作は一気読み、ぜひ映画で観たいと思っていた。昨日の土曜日、休日出勤したついでに新宿三丁目まで足を延ばしテアトル新宿で観て来た。
「ひゃくはち」というタイトルの意味。大晦日に撞く除夜の鐘は108回鳴らされ、それは「人間の煩悩の数」なのだそうだが、偶然にも野球の硬式ボールの縫い目の数と同じであることが、作品の中で語られる。
この物語は高校野球に青春を賭けた若者たちの清々しい感動ドラマ、と思いきや、タバコも吸い、酒も飲み、合コンもする、神奈川の甲子園常連校・京浜高校野球部の補欠を描いた作品なのである。
ベンチ入りできるかできないか、すなわち背番号をもらえるかもらえないかの瀬戸際にいる親友同士の心の葛藤が、激しい練習、試合のリアルな描写とともに描かれる。新聞記者から野球が楽しいかと質問されて、苦しいだけだと答える主人公の言葉。メンバーの座をつかみたいものにとっては、誰かが死んでくれることさえ望んでいる、というようなセリフ。スーパースターではない高校球児の苦しみと喜びに共感を覚える。
自分もかつて高校球児だったが、野球を楽しいと思ってやってなかったなあ。弱い高校だったが、練習と試合で休みなんかほとんどなかったし。だから、原作でも映画でも描かれている女子大生と合コンやる場面などにはちょっと違和感があるが、これが今どきの実態なのか。
原作では、20代後半にさしかかった主人公が回想する形で高校時代が描かれ、現在と過去が行きつ戻りつしながら物語が進んでいくのだが、夏の甲子園大会を前にした終盤の展開は、映画のラストシーンと大きく異なっている。原作を読んでからこの映画を観たものとしては、映画の爽快なラストシーンに思わず拍手を送りたくなった。

2008年9月13日 テアトル新宿 
★★★★


「ラストゲーム 最後の早慶戦」 [CINEMA]


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「野球(ベースボール)、生きてわが家(ホーム)に還るスポーツ。」

映画の最初に示されるこのフレーズが、痛いほど心に突き刺さる。

多くの人に観てほしい感動の一作です。

★★★★★
2008年8月30日
109シネマズMM横浜


『うた魂(たま)♪』 [CINEMA]


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《ネタバレあります》

 『天然コケッコー』で注目をあびた若手女優の夏帆(かほ)が主演の映画。『天然コケッコー』はDVDで観たが、ストーリーよりも夏帆が強く印象に残った。この『うた魂(たま)』は16歳の夏帆が等身大の高校生を演じるさわやかな青春映画だが、この映画の主役は何といっても合唱であり歌である。
 最初のうちは、コメディタッチの映画の雰囲気に、どうも入りこめないところもあったが、合唱のシーンになると、歌の力はどんなにベタなストーリーを超えてしまう。ゴリが番長ならぬ部長を務める合唱団が尾崎豊の「15の夜」を合唱で歌うシーン。この映画の中でも重要な役割を持つシーンだが、迫力たっぷりに観客に迫る。
 クライマックスは夏帆の所属する七浜高校合唱部が出場する全国大会予選。ゴスペラーズがこの映画のためにつくった「青い鳥」(とてもいい曲です)を歌い見事出場をはたした七浜高校がアンコールで歌う、モンゴル800の「あなたに」が極めつけ。コンクール会場全体の大合唱となる感動的なシーンが、『うた魂♪』というタイトルのこの映画のすべてを表している。できれば、映画館の包み込まれるような音響の中で合唱の渦の中に身を委ねてみてください。(字幕を出してくれたら一緒に歌ったのになぁ)

2008年4月13日
TOHOシネマズららぽーと横浜
★★★★


『バッテリー』&『アヒルと鴨のコインロッカー』 [CINEMA]

この間の連休にDVDで観た2本の邦画。

『バッテリー』

 あさのあつこの原作文庫本Ⅰ~Ⅵは、結構はまって読んでいて、この長編をどのように映画化するのか興味があったが、昨年公開時は見逃してしまい、ようやく観ることができた。「直球一本勝負」のさわやかな出来栄えの映画に仕上がっていた。
 中学生になったばかりの天才的ピッチャー原田巧は、最高・最速の球を投げることだけに情熱を賭ける。その思いは周囲を翻弄する。巧の豪速球を受けることに喜びを見出すキャッチャー豪、生まれつき体の弱い弟・青波、巧の一直線な心情を持て余す母親、静かに後ろから見守る父親、かつて野球部の監督をしていて巧の心を一番理解しているじいちゃん、野球部の顧問、チームメイト、そしてライバルの登場。主人公の巧を中心にして広がる人間模様は、まるでマウンドにいるピッチャーを取り囲んで集まるナインのようでもある。つい自分の野球部時代の体験と重ね合わせてしまうが、投げて、捕って、打って、走って、野球ってこんなに単純、でも奥が深くて、そしてこんなにも面白いものなんだと再認識させられる作品。



『アヒルと鴨のコインロッカー』

 『バッテリー』がストレート一本で押してくる映画だとすれば、この映画は、カーブやフォーク、時には魔球までおりまぜて見せる。タイトルからして寓意に満ちている。ミステリー仕立てのドラマの中で、巧みに現実を掬いとって見せる。
 仙台の大学に入学したばかりの椎名(濱田岳)が、この話の狂言回し的な役割で、彼のキャラクターは巧まざるユーモアを醸し出し、時に残酷なシーンもあるこの映画を、いい意味で緩くしている。ボブ・ディランの「風に吹かれて」がキー・ワードならぬキー・ソングになっている。椎名のアパートの隣人である河崎を演ずる瑛太もいい。NHKの大河ドラマ「篤姫」に出演している彼と同一人物とは思えないほどだ。原作(伊坂幸太郎)も面白いらしい。ぜひ読んでみたい。
 


『結婚しようよ』 [CINEMA]


         

 吉田拓郎の曲に乗せて描かれる家族の物語。 拓郎ファンにはたまらない作品だと思います。ファンならずとも、若い頃から拓郎を聴き、歌ってきた世代にも、そして、その世代を親にもつ若い世代にも受けると思います。 全編を通じて流れる拓郎の曲は20曲、拓郎本人の唄だったり、劇中に出てくるバンドが歌ったり、インストだったり、とにかく効果的に、タイミングよく使われています。はじめて聴く曲もありました。今度BOTCHYでリクエストしてみよう。
 次女役のAYAKOは、パワフルな声で『やさしい悪魔』や『風になりたい』を披露しています。彼女は「中ノ森BAND」のボーカル兼ギターで、劇中のバンドも本物のメンバー。今までこのバンドは知らなかったけど、この映画の中での存在感はたいしたものです。もっと聴きたくなりました。ストリートバンド役で出演しているのも「ガガガSP」というバンドで、「フォークをパンクというフィルターに通し、全く新しい形のパンクを誕生させる」とパンフにありました。
 お父さん役の三宅裕司は、若い頃音楽の道をめざしたものの、断念した経緯があり、ギブソンJ-200を押入れの奥深くしまっておいたのですが、娘がそれを復活させ、最後のほうで彼自身がそのギターをかかえて歌うシーンがあります。その唄は何でしょう。答えは見てのお楽しみにとっておきましょう。
 それから、この映画を観るとなぜか美味しい手打ち蕎麦が食べたくなります。観終わった、どんべえと私の足は自然と同じフロアにあるお蕎麦屋さんに向かっていました。

★★★★
2008年2月10日
TOHOシネマズららぽーと横浜 


『母べえ』 [CINEMA]

  山田洋次監督の新作は、吉永小百合を主演にした『母べえ』。「かあべえ」と読ませる、ちょっと変わったタイトルだが、観終わったあとは、この映画にこれほどふさわしいタイトルはないだろうなと思う。
  東京の郊外につつましく暮す野上家では、お母さんのことを「かあべえ」、お父さんのことを「とおべえ」、娘はそれぞれ「初べえ」「照べえ」と呼び合うのだと、成長した照べえのナレーションが映画の冒頭に流れる。時代は1940年(昭和15年)、「間もなく太平洋戦争が始まろうとする、あの絶望的な時代を懸命に生きた人々の、愛に溢れた笑い声や悲しい涙を、そっとスクリーンに写し取りたい、そしてあの戦争で悲しい思いをした人びと、さらには今もなお戦禍に苦しむ人たちすべてに想いを馳せながらこの作品を作り上げたい、と念じます」と、監督はパンフレットの最初に記しているが、まさしくこの想いが、出演者・スタッフ全員の想いとなって結晶となった渾身の一作といえる映画だと思う。衝撃的なシーンがあるわけではない。一つひとつのエピソードを淡々と積み重ねていく中で、愛すべき人たちが、いとも簡単にいなくなってしまう時代の哀しみは、山田洋次流の笑いも織り交ぜながら描かれているものの、観終わったあとに重いものを心に残す。
 となりに座ったおばさん方5~6人の一団は、始まる前からおしゃべりがうるさく、始まってからもしばらくは、「あら、白米食べてるわ」など、いちいち仲間どうしで確認しあいながら観ていたが、終わりに近づいたころには、鼻をすする音に変わっていた。


左から、照べえ(佐藤未来(みく))、母べえ(吉永小百合)、初べえ(志田未来(みらい))
子役の2人が奇しくも「未来」という名前!

★★★★★
2008年2月2日
TOHOシネマズららぽーと横浜 


『ALWAYS 続・三丁目の夕日』 [CINEMA]

前回泣かされたのは丁度2年前のことでした。
http://blog.so-net.ne.jp/inuwan/2005-11-14

そして今回も・・・

前作で泣かされた人、ぜひ続編もご覧ください!
まだ前作を観ていない人、まずはDVDを借りてご覧になってから、この作品をどうぞ映画館で。


『パッチギ!LOVE&PEACE』 [CINEMA]

  

第一作に感動して、続編ができると聞いたときは公開がすごく楽しみでした。
先に観た人から事前に入ってきた情報で、「賛否両論分かれる映画」「前作の続編とする必要のない映画」などの前評判がインプットされていたので、覚悟して観にいったのですが、逆に知っていて良かったのかも。予備知識なく、前作のような感動を期待して行ってたら、「あれ?」と思って、フラストレーションが溜まったかもしれません。
前作とは別の独立した映画として観たとしても、どうしても比べてしまうのは仕方ありません。そうした意味では、前作の感動を超える作品にはなっていないというのが個人的感想です。前作では「イムジン河」という歌をメインに据え、日韓の間にある大きな隔たりを「パッチギ!」していくんだというタイトルそのままのメッセージが伝わってくる映画でした。自分のフォークソングとのかかわりを絡めてブログに書いたのは、もう2年前のことです。
http://blog.so-net.ne.jp/inuwan/2005-04-03-1

今作品は、前作から6年後の設定で、舞台を京都から東京に移し、音楽は加藤和彦のままですが、イムジン河の曲はバックに流れる程度で、歌をテーマにした物語ではありません。今回、監督とプロデューサーが伝えたかったこと。そのひとつが、「命をつなぐ」ということなのかな、と理解しています。難病の息子・チャンスをかかえた兄・アンソン、芸能界で自分の出自を隠してスターにのしあがっていく妹・キョンジャ、ストーリーは彼らの暮す1974年の「現在」と、彼らの父親が徴兵を逃れ着いたヤップ島で爆撃を受け逃げ惑う1944年の「過去」に行きつもどりつ展開していきます。父親が生きて帰ってきたからこそ、兄妹の今があるんだということを強く訴えるための戦場のシーンはまったく予想していなかっただけに驚きでした。この執拗とも思える「過去」のシーンは、戦争映画の大作の主役を射止めたキョンジャが、セリフに異を唱えるくだり、そして舞台挨拶のシーンで自分の本音を話すシーンにつながっているのです。どんなことがあっても生きぬくんだということを主張しているこの映画は、ラストシーンで、医者には半ば見放された難病の息子がひとりで自転車に乗る場面をつくり、未来への希望も示唆しています。
芸能界のタブーにも切込み、在日韓国・朝鮮人の集落を舞台にしてはいるけれど、普遍的な家族の愛をテーマにした映画として観るべき映画だと思います。だから最初と最後の乱闘シーンをあれほどまでに凄絶に描かなくってもと思うのですが。

エンドロールに流れる「あの素晴らしい愛をもう一度」。歌っているのは加藤和彦、佐藤青年を演じた藤井隆、チャンス君を演じた今井悠貴の3人ですが、とてもいいです。

監督:井筒和幸
脚本:羽原大介・井筒和幸
キャスト:中村ゆり、井坂俊哉、西島秀俊、藤井隆
2007年6月9日 TOHOシネマズららぽーと横浜
★★★★


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